HPVワクチン:子宮頸がんの予防
奈良県香芝市 内科・呼吸器内科・アレルギー科、美容皮膚科
こんにちは、ノアクリニックの青野です。今回は子宮頸がんとワクチンについてです。
日本では毎年約11,000人の女性が子宮頸がんになり、約2,900人が亡くなっています。また他のがんに比べて、若い人の割合が高く、20歳代から増え始めて、30歳代までにがんの治療により子宮を失ってしまう人も1年間に約1,000人います。このように妊娠や分娩への影響も大きいことが問題になっています。
ウイルス感染でおこる子宮頸がん
子宮頸がんのほとんどが性接触行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染で生じることが明らかになっています。HPVには200種以上の遺伝子タイプがあり、そのうち15種類ほどが発がんと関連性があるといわれています。頻度が高い順にタイプ16・18・45・31・33などがあります。HPV感染は女性の多くが一生に一度は感染するといわれるウイルスです。その多くは身体の外に出されるため自然に落ち着き、必ずしもがんになるわけではありません。一部残ったウイルスの感染が続くと、一部の人でがんを発症してしまいます。感染を防ぐことががんにならないための手段です。
日本婦人科腫瘍学会.子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん 治療ガイドライン第3版(2023年)
HPV感染を防ぐHPVワクチン
HPVワクチン接種は、2000年代はじめより開始され、現在では世界120か国以上で定期接種されています。さらに20か国以上では男性も接種対象となってきています。子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンです。子宮頸がんのほとんどは、主に性交渉によって感染するHPVが原因のため、感染予防としてのワクチン接種が大切です。HPVワクチンの効果が確実に発揮されるのは、性交渉未経験者です。
HPVワクチンは2価(サーバリックス)、4価(ガーダシル)、9価(シルガード9)の3種類があり、令和5年度からはいずれも公費接種が可能となりシルガード9が主に使用され、子宮頸がんの約9割を予防できると言われています。
HPVワクチンのリスク
ワクチンの副反応には、注射部位の一時的な痛みや腫れ、頭痛などがあります。また、注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が報告されていますが、これについては接種直後30分程度安静にすることで対応が可能です。
平成29年11月の厚生労働省専門部会で、慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された多様な症状とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。
日本では平成15年(2013年)6月から、副反応問題のため接種勧奨の差し控えが約9年続いていました。しかし、上記のようにHPVワクチンの効果と安全性に関する多くの知見が得られたため、令和4年(2022年)4月よりワクチン接種の推奨が再開されました。さらに休止期間でHPVワクチンを接種できなかったかたのためにキャッチアップ接種が公費で接種できるようになりました。
公費HPVワクチン接種対象者と接種スケジュール
定期接種対象者:小学校6年~高校1年相当年齢の女子(2008年4月2日~2013年4月1日生まれ)
キャッチアップ接種対象者:1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女子
厚生労働省HPVワクチンに関するリーフレットより
接種をご希望の方は、電話、窓口でも対応いたしておりますのでお問い合わせください。