睡眠時無呼吸症候群について②;治療(CPAP療法)
奈良県香芝市 ノアクリニック 内科・呼吸器内科・いびき外来 総合内科専門医
こんにちは、ノアクリニックです。今回は睡眠時無呼吸のCPAP療法についてです。
CPAP治療とは
CPAP治療(Continuous Positive Airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)とは、寝るときに専用の鼻マスクをつけ、CPAP装置から一定の空気を送り込むことで気道を広げておき、咽頭が塞がらないようにする治療法のことで、睡眠時に気道を確保することで呼吸がとまるのを防ぎます。
CPAP治療を行うことで睡眠中の無呼吸やいびきが軽減し、しっかりと眠れるようになるため、昼間の眠気や疲労感、集中力や注意力の低下などの症状が改善または軽減します。夜間のいびきは、同居する家族の睡眠を妨げることもあるため、治療によって家族の睡眠の質も改善することが期待できます。また、車を運転しているときに強い眠気に襲われ交通事故を起こしてしまうと、自分自身や同乗者、相手側の生命や身体機能に障害が及ぶ可能性もあります。二次的な被害を防ぐためにもCPAP治療の継続が重要となります。それだけでなく予後の改善や心血管危険因子の減少により心疾患の死亡率を減らす効果、高血圧などの合併症の予防改善効果があると立証されております。
睡眠中の1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)
AHI | 程度 | 症状 |
5回未満 | 正常 | 睡眠中の呼吸状態に問題ありません |
5~15回未満 | 軽症 | 高血圧や糖尿病のリスクが高くなります |
15~30回未満 | 中等症 | CPAP療法が推奨されます |
30回以上 | 重症 | 心血管疾患や2型糖尿病、突然死を併発するリスクあり CPAP療法は標準的治療法 |
CPAP治療の適応と外来通院
CPAP治療は、精密ポリソムノグラフィー検査(PSG)でAHIが20以上、または簡易型検査でAHIが40以上で治療適応となり保険適用されます。健康保険でCPAP治療を受けるためには毎月1回の外来受診が必要となります。
CPAPで用いるマスクの種類にはネーザルタイプ(鼻のみ覆う)、ピロータイプ(鼻孔に装着する)、フルフェイスタイプ(鼻と口の両方覆う)がありますが、最も一般的なのはネーザルタイプです。CPAPを装着して眠る際には鼻呼吸が必要となるのですが、鼻詰まりなどで原因で口呼吸になってしまう人の場合にはフルフェイスタイプを用いることがあります。診察時に相談して適切なタイプを選びます。
定期外来ではCPAPの治療経過・使用状況を確認し、必要に応じて患者さま個々に適した機器設定の調整を行います。特にCPAPの使用時間は治療効果に影響があり、4時間以上の毎夜の使用で症状の改善や心血管イベントの改善が報告されており、またCPAP治療の中断により症状は再発するため、治療の継続が重要とされています。
日本の医療保険制度では、CPAP装置を医療機関からレンタルして使用するのが一般的です。機器の保守管理やマスク・エアチューブなど治療に必要な消耗品の供給は医療機関または医療機器供給会社が対応しています。CPAP装置は使用する年数が長くなれば長くなるほど、患者様の中にはCPAP装置の購入を検討する方もいますが保険適用外になりますので、CPAP装置の機械代やメンテナンス代などの費用が自己負担でかかることとなります。
CPAP治療のメリット、デメリット
メリット
- いびきや無呼吸が改善し、睡眠の質がよくなる。
- 目覚めがよく、昼間の眠気が改善することで体調もよくなる。
- 仕事や学習のパフォーマンスが上がる。
- 生活習慣病の改善にもつながる。
デメリット
- 使用開始時になかなかマスクに慣れずに不快感を感じることがある。
- マスクのフィッティングの影響で鼻や口の周りが赤くなったり、かぶれることがある。
- 送気の影響で鼻・口が乾いたり、腹満感や耳鳴りをじかくすることがある。
日常生活で気をつけること
CPAP療法は対症療法であり、病気を根本的に治すものではないため、基本的には生涯にわたって使用することとなりますが、効果的な生活指導としては減量が重要です。減量効果でいびきや無呼吸が軽減しますし、その他の生活習慣病の予防や改善にも効果的です。また飲酒や喫煙などの生活習慣を見直すことも必要です。
内科診療についてはこちら
ノアクリニックのメディカルダイエットについてはこちら